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【参加者募集】第44回「100分de名著を料理する―アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』」
常識の向こう側に、もうひとつの「現実」がある
ENGAWAプロジェクトでは、毎月第1土曜日の午後に、NHK Eテレ「100分de名著」のテキストを素材にした対話型読書会「100分de名著を料理する」を開催しています。
私たちが大切にしているのは、名著の内容を学ぶことだけではありません。
一冊の本を入口として、自分自身の人生を振り返り、互いの体験を語り合いながら、新しい気づきを見つけていくこと。
年齢や職業、専門分野を超えて集まった参加者が、「自分ならどう考えるか」「自分の人生とどこでつながるか」を自由に語り合います。
さて、今回の名著は少々変わっています。
哲学書でも、小説でも、宗教書でもありません。
「世界の見方そのものを変えてしまおう!」と宣言した一冊です。
■ 2026年9月のテーマ
アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』
第44回となる9月5日(土)のテーマは、フランスの詩人・思想家アンドレ・ブルトン(1896~1966)が1924年に発表した『シュルレアリスム宣言』です。
「シュルレアリスム」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
溶けて垂れ下がる時計を描いたサルバドール・ダリ。
空に浮かぶ巨大な岩や、山高帽の男など、不思議な世界を描いたルネ・マグリット。
現実にはあり得ないものを組み合わせた、奇妙で夢のような絵画を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、シュルレアリスムは単なる「不思議な絵」の様式ではありません。
その出発点には、
「私たちが現実だと思っているものは、本当に現実のすべてなのか?」
という、とても根源的な問いがありました。
■ 第一次世界大戦が突きつけた「理性」への疑問
ブルトンの思想を理解するためには、第一次世界大戦という巨大な出来事を避けて通ることができません。
19世紀から20世紀初頭のヨーロッパでは、科学や技術が急速に発展し、「人間は理性によって、よりよい社会をつくることができる」という進歩への期待が広がっていました。
ところが、その科学技術と合理性が生み出した近代社会は、第一次世界大戦で空前の大量殺戮を引き起こします。
「理性的であるはずの人間が、なぜこれほど非理性的なことをするのか?」
ブルトン自身も戦時中、医学生として軍の医療施設に勤務し、精神疾患を抱えた兵士たちと接しました。
そこで彼が出会ったのが、人間の「理性」だけでは説明できない言葉や心の世界でした。
さらにブルトンは、精神分析を切り開いたジークムント・フロイトの思想から大きな影響を受けます。
人間の心には、自分で意識できる領域よりはるかに広大な「無意識」が存在する。
夢や偶然の言葉、突発的な感情、理由の分からない行動。
そこには、理性によって押さえ込まれている、もう一人の自分がいるのではないか。
ブルトンたちは、その無意識を芸術によって解放しようとしました。
■ 「考えないで書く」――自動書記という実験
その代表的な方法が「自動書記(オートマティスム)」です。
普通、文章を書くときには、
「こんなことを書いたら変に思われないだろうか」
「正しい文章になっているだろうか」
「もっと分かりやすく書かなければ」
と考えます。
つまり、私たちは絶えず自分の言葉を「検閲」しています。
ブルトンは、この理性による検閲をいったん外してみようとしました。
頭に浮かんだ言葉を、正しいかどうか判断せず、そのまま書いていく。
意味が通じなくてもいい。
論理的でなくてもいい。
美しい文章でなくてもいい。
そうすることで、自分でも知らなかった思考や感情が現れてくるのではないか。
ブルトンたちは実際に、自動書記や催眠状態での詩作など、さまざまな実験を行いました。
シュルレアリスムとは、単なる芸術運動ではなく、**「人間の中に眠っている未知の世界を発見する実験」**でもあったのです。
■ 夢と現実が溶け合う「超現実」
「シュルレアリスム(surréalisme)」は、日本語では一般に「超現実主義」と訳されます。
しかし「現実を超えて、非現実へ行く」という意味ではありません。
ブルトンが目指したのは、目の前の日常的な現実と、夢や無意識の世界を結びつけることでした。
私たちは起きている時間だけを「現実」と呼び、夢を「非現実」として片づけています。
しかし人生のかなりの時間を、私たちは夢の中で過ごしています。
ふと浮かんだアイデア。
理由は分からないけれど惹かれるもの。
偶然出会った人。
言い間違い。
勘違い。
空想。
子どものころに見た夢。
そうした一見「役に立たないもの」を切り捨てず、現実と同じくらい大切なものとして受け止めたら、世界はまったく違って見えてくるかもしれません。
ブルトンは、夢と現実という一見矛盾した二つの世界が溶け合うところに、より大きな現実――**「超現実」**があると考えました。
■ ダリやマグリットだけではない「20世紀最大の芸術革命」
1924年に発表された『シュルレアリスム宣言』を起点として、この運動は急速に広がっていきます。
ポール・エリュアールら詩人だけでなく、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、マックス・エルンストなど、多くの芸術家に影響を与えました。
そして、その波はフランスやヨーロッパだけにとどまりません。
北米、ラテンアメリカ、そして日本へ。
文学、絵画、写真、映画、広告、デザインなどジャンルを越え、20世紀の文化そのものを大きく変えていきました。
私たちが現在、広告や映画、ミュージックビデオなどで当たり前のように目にしている「現実にはあり得ないものを組み合わせる」表現にも、その遠い源流としてシュルレアリスムの影響を見ることができます。
それほど大きな文化的革命の「設計図」となった小さな一冊が、『シュルレアリスム宣言』なのです。
■ そして2026年、「無意識」を考える意味
では、100年以上前の芸術運動を、なぜ今読むのでしょうか。
現代の私たちは、かつてないほど「正解」に囲まれて生活しています。
検索すれば答えが出てくる。
SNSでは人気のある意見が数字で示される。
おすすめの商品も、見る動画も、読むニュースもアルゴリズムが選んでくれる。
そして生成AIに尋ねれば、もっともらしい文章や画像まで瞬時につくってくれます。
とても便利な時代です。
しかし、その一方で、
「自分は本当は何を感じているのだろう?」
という問いが、以前より難しくなっているようにも思えます。
常識。
世間体。
評価。
効率。
損得。
SNSの「いいね」。
AIが提示する「もっともらしい答え」。
そうしたものをいったん横に置いたとき、自分の中から何が出てくるのでしょう。
ブルトンが100年前に試みた「理性の制御を外してみる」という実験は、生成AI時代を生きる私たちにとって、意外なほど新鮮な問いを投げかけてきます。
■ 今回の「100分de名著」
今回の番組では、美術評論家でフランス文学にも造詣の深い伊東順二さんを指南役に、『シュルレアリスム宣言』を読み解きます。
ブルトンはなぜ「理性」を疑ったのか。
なぜ夢や無意識に注目したのか。
「自動書記」は何を発見しようとしたのか。
そして、シュルレアリスムはなぜ文学や絵画の枠を越え、世界的な文化運動になったのか。
一見すると難解な『シュルレアリスム宣言』を、20世紀の歴史と芸術、そして私たちの日常生活へとつなげながら考えていきます。
■ 「100分de名著を料理する」で語り合いたいこと
今回も、シュルレアリスムの美術史的な知識だけを学ぶ会にはしたくありません。
例えば、こんなことを語り合ってみたいと思います。
「自分の常識がひっくり返った経験はありますか?」
「理由は説明できないけれど、なぜか惹かれるものはありますか?」
「夢から何か大切なことを教えられた経験は?」
「偶然の出会いによって人生が変わったことはありますか?」
「自分でも気づいていない自分を、どうすれば発見できるでしょう?」
そして今だからこそ、もう一つ。
「生成AIは、人間の無意識や想像力を広げる道具になるのでしょうか。それとも、私たちの発想を平均的なものへ近づけてしまうのでしょうか?」
100年前、ブルトンたちは「自動書記」という方法で、自分の中にある未知の言葉を引き出そうとしました。
100年後の私たちは、生成AIとの対話によって、自分一人では思いつかなかった言葉やイメージに出会っています。
両者はまったく異なるものですが、そこには「自分の意識だけでは届かない場所から何かを取り出す」という、不思議な共通点も見えてきます。
そんなことも、皆さんの体験を持ち寄りながら考えてみたいと思います。
■ はじめて参加される方へ
美術や文学の専門知識は必要ありません。
ブルトンを知らなくても大丈夫です。
シュルレアリスムと聞いて「ダリの絵くらいしか知らない」という方も大歓迎です。
私たちは「正しい答え」を探す勉強会ではなく、一人ひとりの人生経験を大切にする対話の場を目指しています。
名著を読む。
そして、自分の経験という調味料を加えて、みんなで「料理する」。
「こんなことを言ったら変かな?」
今回に限っては、その「変かな?」と思ったことこそ、大歓迎かもしれません(笑)。
■ 開催概要
日時:2026年9月5日(土)14:00~16:00
会場:みんなの秘密基地(姫路)+Zoomオンライン
開催方法:ハイブリッド開催
定員:会場8名程度・Zoom8名程度
参加費:1,000円
参加方法:本投稿へのコメント、または和﨑まで直接ご連絡ください。
■ 「現実」を、もう一度見直してみる
私たちは普段、「現実を見なさい」と言われます。
しかし、その「現実」とは何でしょう。
社会の常識でしょうか。
数字でしょうか。
目に見えるものだけでしょうか。
ブルトンたちは、夢や無意識、偶然や想像力もまた、人間にとって紛れもない現実なのだと考えました。
現実から逃げるためではありません。
現実を、もっと豊かに見るためです。
日常の中で見過ごしているもの。
自分の中にあるのに言葉になっていないもの。
役に立たないからと捨ててしまった想像。
子どものころには見えていたのに、大人になるにつれて見えなくなった世界。
『シュルレアリスム宣言』を入口に、そんな「もうひとつの現実」を探してみませんか。
名著を「読む」だけでなく、名著を通して自分自身の常識を少し揺さぶってみる2時間。
9月は、みんなで少々「現実」からはみ出してみましょう。
そこには案外、これまで気づかなかった自分自身が待っているかもしれません。
皆さまのご参加をお待ちしています。
トピック: (2026/09/05)第44回「100分de名著を料理する―シュルレアリスム宣言」
時刻: 2026年9月5日 02:00 PM 大阪、札幌、東京
https://us02web.zoom.us/j/81879180232?pwd=mGJlfQqsMjJYZ0xccCOtUOuCKSkgDL.1
ミーティングID: 818 7918 0232
パスコード: 879393
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